Gt.零

 Gt.サトシ

 Vo.悠希

 Ba.緋遊

 Dr.一郎

7年の活動歴に終止符を打つLycaon。最新アルバム『Camera obscure-カメラオブスキュラ-』の仕上がりが良かっただけに、あまりにも残念な発表である。だが、彼らの気持ちは前向きだ。それは5月27日にリリースされるニューシングル「ジプシー」を聴いてもらえればわかると思う。解散を決めた理由、そしてこれからのツアーに賭ける想い、今感じていることすべてを5人に話してもらった。

――解散発表をしてからしばらく経ちました。
悠希:最新アルバム『Camera obscure-カメラオブスキュラ-』を聴いて、今年のLycaonはやってくれるんじゃないかと思ってくれていた人も多かったと思うんですよ。そんな中、いきなりの発表で困惑しているのではないかなと。何で今?って。
――理由を伺ってもいいですか?
悠希:燃え尽きたとかではないんです。Lycaonは活動してから7年が経つんですけど、ずっとやってきて終わるならばここだろうと。タイミング的に良い時期というか。僕らの中でLycaonはここで解散した方が1番輝いたままでいられるだろうと判断したからなんです。
サトシ:うん、それはあるかもね。
――バンドとして右肩上がりの状態だっただけに残念でなりません。
サトシ:アルバムを作り終えたとき、このメンバーで築き上げてきたものを形にできた、俺たちって最高にかっこいいと思えたんです。一区切りというか、そうやって形にしたからこそ、このタイミングでの解散発表だったのかなって。
悠希:でも、解散するのが残念って言ってもらえるのはありがたいですね。それこそ、これだけ活動してきたのに何も言われないのは悲しいですから。
――しかし、活動を振り返ってみると色々なことがありましたね。
緋遊:メンバーチェンジもありました。
――バンドコンセプトの変化もあり。ということで、今一度活動を振り返ってみようかと。
サトシ:最初のシングルを出したとき、高田馬場AREA近くのファミレスでインタビューしてもらいました。
零:な つ か し い 。
緋遊:7年前のコンセプトは、“着飾った狼”?
悠希:そうそう(笑)。当時はバンド名そのままがコンセプト。でも、あの頃はわからないことだらけでしたね。
サトシ:あの頃の俺たちは何も持っていなかったなって。人間的な魅力もミュージシャンとしての自信も。
悠希:堂々としていなかったよね。僕は、ライヴやっているときになかなか前を向けなかったですから。それだけ緊張していたんですよ。今となっては緊張したいぐらい(笑)。
――着飾った狼をバンドコンセプトに活動を続けた第一期、どれぐらい続いたのでしたっけ?
サトシ:2年ぐらいですね。
悠希:目の前にあることをひたすら全力でやっていったら、2年経っていたという感じでした。
零:ひ っ し 。
悠希:そう、すごく必死だったよね。そして、バンドで何ができるかっていうのを考え出した時期でもありました。
――その後、第二期に突入します。
サトシ:ここは大きいですね。
悠希:やっぱり、メンバーが変わりましたからね。
サトシ:バンドとしてやりたいことも出てきて、それを形にしていこうというタイミングでメンバーチェンジがあって。
悠希:第一期の頃って、激しい音楽をやるバンドが周りにもたくさんいて。それもあって僕としては違うことがやりたくなってしまったんですよね。みんながやるなら一緒のことはやりたくないっていう。それでちょうど良いタイミングで第二期を迎えて。ここでEROSというコンセプトを立てたんです。
――第二期がスタートしたときは、メンバーの仲も今ほど和気あいあいとした感じでありませんでしたよね?
緋遊:悠希とは最初喋っていなかったですね(笑)。でも、今となっては仲良くしてます。
――第二期で加入した緋遊さんにとっては、けっこう苦労も多かったのではないですか?
緋遊:前のメンバーさんのファンの方もいましたからね。ライヴでベースソロを弾いても、弾いてほしくないって言われたりもしましたし。僕はLycaonが好きで入ったから、葛藤はありました。でも、ひたすらやるしかないかなって。そんなときにうちの社長も助け船を出してくれて。
サトシ:その一言で変化はありましたね。
――“EROS”というコンセプトを立ててから、大きく変わったのは悠希さんではないでしょうか?
悠希:そうですね。でも、とりあえずはイメージを定着させるってことが第一でした。あの頃は早く歳を取りたいって思ってましたね(笑)。
サトシ:きっと、EROSがバンドのイメージして定着できたのは、ブレずに続けてきたからだと思うんです。そうやってきた第二期、第一期と同じく2年ぐらい続きました。
緋遊:その2年、一朗はほぼ一緒にいますからね。
一朗:緋遊が加入した半年後に俺がサポートでLycaonに入ることになって。
――サポートらしからぬ人が入ったという感じでしたよね。
緋遊:そうです。バンドを変えてくれた男ですね。バンドっていうより、人を変えてくれたのかな。
一朗:良いこと言うね(笑)。それで雰囲気が良くなったと思われていたのなら嬉しいです。
サトシ:でもそれはある。
一朗:言われてみれば、俺も悠希とは最初に喋ってないかな。
悠希:そうだね(笑)。たぶん、僕のイメージが先行していたというか。他のバンドからも言われるんですけど、ちゃんと話すと思っていたイメージと違うってなるんですよ。それだけ近寄りがたいというか、怖い雰囲気を出していたんだと思います。でも、そういう僕と他のバンドの距離を縮めてくれたのが一朗でもあるんですよ。僕っていうか、Lycaonの入り口となってくれたんです。
一朗:俺ってそういう立ち位置なんですよね(笑)。サトシもよく喋る方なんですけど、ギタリストと話すことが多いので、バンド全体に話しかけるのは俺の役目でもあるかな。
悠希:その頃からですね、他のバンドとも接することが多くなりました。
サトシ:ライヴハウスに行くと必ず一朗が他のバンドと話していて。すぐに友達になれるんですよね。あれはびっくりしたなぁ(笑)。
――一朗さんが加入していなかったら、今のバンド内の雰囲気はなかったかもしれないですか?
悠希:閉鎖されたバンドになっていたと思います。
一朗:その割には、正式加入するときにちゃんと口説かれたというわけではないんですよ。サポートからの流れで入ったというか(笑)。でも、社長が一朗でいこうって推してくれたんですよ。
サトシ:PAさんからも、逃げられる前に早く入れてしまいなよって言われましたね。
一朗:俺としてはサポートをやる前からLycaonに入りたいっていう気持ちがあったので、社長には入りたいですって言っていたんですよね。
――一朗さんが正式加入されたのは2012年11月30日の川崎クラブチッタ公演より。同時に、第三期Lycaonがスタートしました。ここでまたコンセプトが生まれ変わります。
悠希:EROSを継承させながら、“マゾヒストレッドサーカス”へとコンセプトは変化していきました。そうしたことにより、もっと濃い世界観を提示することとなりました。
――何だか、3回新しいバンドを組んだという感じがしませんか?
サトシ:それぐらいの大きな変化はありました。
一朗:だから、7年も続いたんじゃないかって思うんですよ。 悠希:第一期のまま変わらずにいたら、もっととっくにバンドが終わっていたと思います。
サトシ:こうして振り返ってみると、7年って早かったなって。あっという間な感じがしますね。
――下手をしたらマンネリ化してしまうかもしれないのに、積極的にコンセプトを変えてやってきたというところが良かったのかもしれませんね。
サトシ:そうですね。
緋遊:第一期があるからこそ第二期がある。そしてその2つをやってきたから今があるのかなって思います。
悠希:たしかに。
サトシ:バランスの良い5人が揃ったなって思いますよ。
――もっと見ていたいという気持ちはあるのですが。
悠希:そうですね。自分でも、Lycaonの5年後ってどうなっているのかなとか考えますよ。
――急に第四期を始めても構いませんからね(笑)。
零:さ い せ い(笑)。
――とはいえ解散するのは事実。寂しさはありますが、最後までしっかりと見ていようと思います。この後、5月27日にはニューシングル「ジプシー」のリリースもありますし。
サトシ:はい。そして、ワンマンツアーもあります。
緋遊:けっこうな数ありますからね。
――ライヴの見せ方も初期と比べるとずいぶん面白くなりました。
悠希:ただ演奏するっていうだけのバンドではなくなりましたからね、Lycaonは。僕は歌詞も間違えていたりしました(笑)。
サトシ:たとえば演奏中に誰かがミスをしたとしても、そのフォローがうまくなりましたね。
一朗:そういえば、この間俺がライヴ中にミスをしてしまったんですよ。まったく違うところで入ってしまったんですけど、メンバーがフォローしてくれましたね。自分としても慌てるっていうことがなくなりました。前はミスをしたら、今日はもうダメだって引きずってしまっていたんですけど、今は気持ちの切り替えが早くなったというか。
悠希:曲順間違えるってことは何度かありました。でも、そのときもメンバーがちゃんと付いてきてくれるんですよ。
一朗:扇り方で何の曲がわかるんです。だから、間違えて歌っても大丈夫(笑)。でも、そうやって間違えたこともMCで言えるほど余裕なんですよ。
緋遊:それはそれでライヴらしくて楽しいなって思います(笑)。
一朗:俺もそれ楽しいって思うわ(笑)。
サトシ:MCと言えば、この間のライヴで俺の笑い方を一朗が真似してきたんですよ。それがあまりにも似ていて。
一朗:悠希は、俺が真似したって気付かないぐらい似ていたみたいです(笑)。
悠希:でも、昔だったらこういうことで笑える余裕もなかったんだろうなって思います。
――慣れてきたんでしょうね(笑)。メンバーの中で1番ミスが少ないのは零さんですか?
零:う ー ん 。
緋遊:ミスをしたとしても顔に出しませんから(笑)。
零:ぜ ん ぶ な か っ た こ と に す る。
一朗:ずるいなぁ(笑)。俺の場合、ミスをしたらカウントでごまかせないものかと、ついつい音を大きくしたりしますからね。
――それもずるい(笑)。
サトシ:それぞれのごまかし方があるんです(笑)。
――ちなみに、これまでに何本ライヴをやってきたか把握していますか?
一朗:1000ぐらい。
緋遊:1年で100だとしても、それぐらいになるか。
零:す ご い ね 。
一朗:最初から出演者用のパスを残していたらすごい数になるね。
サトシ:俺、最初はパス残していたんだよ。だけど、これを集めていったらものすごい数になるんじゃないかと思い、収集やめました(笑)。
緋遊:色々と深めていくと、この曲は何回やったんだろうってことになるよね。
――何の曲が1番多く演奏されてきたのでしょう?
緋遊:「Who’s bad psycho party」ですかね。
悠希:あぁ、500回以上はやってるかもね。ライヴでの定番曲です。
――反対に、あまりやらない曲というのもありますよね?
悠希:ありますね。音源化していない曲もありますし。
サトシ:お蔵入りの曲とかね。
――それを考えると、これからのライヴのセットリストも変わってきそうではありませんか?
悠希:えっ、やれと!?
一朗:俺が知らない曲が入ってくる可能性が。
緋遊:同じく(笑)。
悠希:方向性が違うので、今のバンドの雰囲気とは変わってきてしまうかも(笑)。昔は曲がないからライヴどうしようって言っていたんですけど、今は曲が多くてやりたくてもできないって困ってしまうんですよ。でも、Lycaonが終わるまでにあと何曲できるんだろうって思うと少し寂しくなりますね。でも、最後までまだ時間があるから、できたらラストシングルでも出そうかなって。
――なるほど、フルアルバムをリリースと。
緋遊:あれ、今1曲って言ったような(笑)。
――ツアーファイナルは11月6日、赤坂BLITZ。過去最高のライヴになることを祈っていますよ。
悠希:これだけの日程でラストツアーを回れるので、会場毎にセットリストは変えていきたいなって思いますね。個人的な願望でもありますけど、ツアーファイナルに向けてLycaonの出してきた曲を全部できたら嬉しいなって。応援してくれたファンのためにも極力やってあげたいんですよね。Lycaonの活動の歴史を振り返りつつ、できたらいいなと思っています。
――その前にメンバーの聖誕祭を挟んでしまうあたり、らしい感じもしますけど(笑)。
一朗:普通は解散を決めたバンドがやらないですよね。でも、やりますよ、俺と緋遊の聖誕祭!
緋遊:去年は、なかったので(笑)。
一朗:俺たちからは何が欲しいとか、敢えて言いませんよ。
サトシ:プレッシャー(笑)。この2つはツアーとは違った流れになると思うので、単純に楽しみにしてほしいですね。
悠希:そして、最高の気持ちのまま、赤坂BLITZでLycaonを完結させたいと思います。

Interview:ERI MIZUTANI

『MASOCHIST RED OBSCURA Vol.2 -endroll-』
―Lyacaon LAST LIVE—
■日程:2015年11月06日(金)
■会場:赤坂BLITZ