１ｓｔフルアルバムを経て発売される今回のシングルは、間違いなくアルバムを越えた。ＳＣＡＰＥＧＯＡＴのニューマキシシングル「君ノ“心臓”ニ恋シテル」は、９月９日にリリース。タイトルからは想像も付かないほどの展開に驚かされる事だろう。

──１ｓｔフルアルバム『「デキソコナイ」の林檎』の発売から５ヶ月、ニューシングル「君ノ“心臓”ニ恋シテル」は、これまでの成長が音に表れているなと思いました。
春：それは嬉しいですね。
──ライヴで培ってきたものがちゃんと出ていると思うのですが、いかがでしょう？
春：アルバムをリリースした後に、森羅万象ツアーやワンマンツアーをやったので、それは自分たちにとって大きかったかもしれません。
──振り返ってみれば、過酷なスケジュールでしたが。
たつき：過酷だったっけ？
春：過酷というか、ギュッと詰まっていた感じはします。でも、今回シングルを出すにあたり、アルバムを出して落ち着いたねっていう感じには思われたくなくて。それよりも、更に攻めた作品にしたいっていうのがコンセプトとしてあったので、自分たちを見つめ直すというよりかは、このままの勢いで行こうというのは強かったですね。
──ここ最近、より尖ってきたなと感じられるのは、４人中、誰ですか？
たつき：基本的には穏やかなんですけど、ステージに立つとみんな尖ってしまうんですよね。
春：なので、全員で一緒にいるとすごく尖れるという（笑）。
──なるほど（笑）。さゅらさんとしても、本作を作曲するにあたり、そういった勢いは大事にしていこうと？
さゅら：そうですね。ただ、激しい曲や尖ってきた曲というのは、今までにも結構出してきていて。なので今回は、作る側としてどうしたらいいかっていうのを、ツアー中にそれぞれに聞いた事はありますね。そうしたら、ＬＡＹＨＡが歌モノでも良いかもねって言ってきたんですよ。その上で、アルバムを出した後だし、ＳＣＡＰＥＧＯＡＴってこういうものだよねっていうところが見せられたら、ファンの人も盛り上がるんじゃないだろうかって考えて曲を作っていきましたね。
──アルバムで出した曲を越えないといけない、というプレッシャーも感じつつ？
さゅら：プレッシャーは相当ありました。作品って比べるものではないと思うんですけど、やっぱり越えなければいけないと思うので、今出来る最高点を出していきましたね。
たつき：さゅらが作る曲は全部良いから。でも今回は、みんなであーだこーだと話していきましたね。まぁ、そこで出た話が作曲の参考になればいいなと思っての事なんですけど。
──それは、自分の演奏のしやすさも考えて意見を言うんですか？
たつき：自分が叩きたいっていうのもそうなんですけど、今、ＳＣＡＰＥＧＯＡＴにこの曲があったら良いスパイスになるだろうっていうのを考えますね。でも、あくまでも参考程度に。必ずこういう曲じゃないと嫌だっていうのは無いです。
ＬＡＹＨＡ：俺は、曲に関しての意見はあんまり言わないと思うんですけど。
たつき：そう？ 今回、結構言っていたと思うけど。
さゅら：曲作りの時って、メンバー間でＬＩＮＥのやり取りも頻繁になるんですけど、ＬＡＹＨＡは、テンポはいくつで！ってかなり細かく言ってきました。
ＬＡＹＨＡ：あれ、言ってた？（笑）。そうだ、メンバーの意見がまとまりかけている頃に、俺がテンポを変えたんだ。きっと、何か自分の中で思うところがあったんでしょうね（笑）。
さゅら：どうやら、ライヴで演奏する時に、曲中でファンの子にジャンプさせたかったみたいなんですよ。それでテンポ感にこだわったみたいです。
ＬＡＹＨＡ：そうだ、思い出した！
たつき：元々のテンポからかなり速くなったんで、レコーディングで叩いている時、俺の腕は痙攣してましたけど（笑）。でも、結果、あれぐらい速いテンポで良かったなと思いました。
さゅら：この曲は、ド頭のリフから始まって、完全にＳＣＡＰＥＧＯＡＴです、何も変わりませんよっていうところが出せているので、そこが聴きどころだと思います。
──イントロは、楽器陣泣かせだと思います。この速さはライヴで死傷者を出しますよ（笑）。
さゅら：ほんと、体力の問題が（笑）。過去１番、テンポが速いんですよ。でも、新しい事に挑戦していかないとなって。この曲を始め、他の２曲も今までに使った事のないテンポとキーに挑戦しているんですよ。そこは、自分たちの分かりやすい挑戦なのかなと。
たつき：新たな尖りを見せる事の出来た作品なのかなと思いますね。
──ドラマーの注意すべき点は、そんな中でも走り気味にならないようにというところでしょうか？
たつき：どちらかと言うと、おいていかれないようにって感じですね。なので、しっかりとやらないと。
さゅら：勢い重視なので、落ち着いて演奏するよりも、ガツガツとして欲しいですね。
たつき：だけど、この曲に関してはドラムのレコーディングは割と早く終わったんですよ。体力の余っているうちに録るのが勝負かなと思ったので。
さゅら：得意だよね、ああいうビートは。
──いつもながらの余裕さが伺えます。ベースの録りはいかがでしたか？
ＬＡＹＨＡ：この曲は、いかがでしたっけ？
さゅら：一緒にいたんですけど、サビを３パターン用意してもらったんですよ。
ＬＡＹＨＡ：とりあえず、３つ録っておこうかって。
──簡単におっしゃいますけど、３曲分作っているようなものですからね。
さゅら：確かに（笑）。でも、可能性を広げておこうって。それで、プリプロの段階でサビを３パターン出してもらったんですよ。分かりやすく言うと、ポップと、その中間と、すごくダーク。だけど、メロはどれにでも入る事が出来るんですよ。それで、最後の最後に春に聴いて、この形に決まったんです。
ＬＡＹＨＡ：それだけに、自信のあるものになりました。
さゅら：良いものになったと思います。ギター録りは、テンポがやっぱり速いなって。でも、速いんだけどしっかりと弦が鳴るように、いつもと違うピックを使ってみたんです。いつものだと柔らかすぎてダメだったので、堅い素材のものに変えて弾いていきましたね。あとは、聴きどころはサビですね。今まではコードでパーンと広がる曲が多かったんですけど、ここでは、ああいった進行の中、ダークな感じでギターの低音が鳴っているので、そこは挑戦なのかなって思いますね。バンドからギターを教わった感じがします。
──これだけ新しい事続きの楽曲ですから、歌詞を乗せる際にも、新しい事をやろうと意気込んで取り組んでいったのではないですか？
春：そんな事も無かったんですよ。でも、タイトルから想像も付かない曲には仕上げたくて。良い意味で、聴く人の想像を裏切りたかったんですよね。なので、それが歌詞を書く際のコンセプトというか。あとは、とりあえず、夏と海というのはテーマとして先に挙げていたんですよ。だから、そこを想像しながら書いていったところはありますね。
──結果、とんでもない内容になりましたが。
春：なってしまいましたね（笑）。リアリティよりは想像の世界なのかなって感じです。この主人公は、思考回路的には爽やかなんですよ。別にどす黒くはないんですよね。そこが良いギャップになればいいなって。
──今回は、血が流れる等の描写は一切ありませんからね。
春：そこは敢えて外したんですよ。それこそ、俺たちなりの攻め方かなって思います。あと、歌に関してはキーが低めで雰囲気重視な感じがしたので、世界観を意識しつつ、ライヴをイメージしながら歌っていきましたね。
──こちらの曲はＰＶもあるとの事ですから、どのような映像で描き出されるのか楽しみです。そして、カップリングには２つの異なる楽曲が収録されています。
さゅら：「思春期と伝染病」は得意な曲でもありますね。やりたいものをそのまま書いていったというか。表題も夏をイメージしましたけど、実はこっちも夏をイメージしていて。でも、こっちでは夕立がかった情景を意識していったんですよね。ギターから始まって、全体に広がってというのはやった事が無かったので、そういう曲があってもいいかなと。回想シーンがあって、また現実に戻ってくるというストーリーになればいいかなと思って書きました。
──こういった曲が板に付いてきたなという印象を受けました。
たつき：そうですね、その自覚はあります。
さゅら：即答でしたね（笑）。
たつき：曲が来た時に、さゅら節の良い曲だなって。
さゅら：今と同じ事が、そういえばＬＩＮＥで届いてました（笑）。
たつき：なので、困らずに録る事が出来ましたね。
──リズム隊が上達してきたなというのが感じられる曲でもありますよね？
ＬＡＹＨＡ：自信を持ってお届けしています（笑）。この曲は割と弾ききらないというか。足すというよりは引く事に重点を置いて録っていったので、よりリズムが聴こえるようになっていると思います。
──そういえば、足す事よりも引くという作業の方が大変だと前におっしゃっていましたが、今はどうですか？
ＬＡＹＨＡ：大変というよりも、楽しいなって思えるようになってきましたね。あと、さすがにこれは３パターン録ってっていう事も無かったので。
さゅら：他で無茶ブリしたかも（笑）。
ＬＡＹＨＡ：こっち変えようか～みたいな言い方はいつもしてくるんで、それが普通になっているんですよね（笑）。
さゅら：自分が得意な曲っていうのもあって、ベースに求める事も増えてきてしまうんですよね。自宅作業とは言え、一緒に作業が出来る環境なので、その場で弾きたい事をやってもらえるっていうのは良いですよね。結果的にそれが良いものになったなとも思いますし。あと、ギターはコード感が自分らしいかなって。ただ、春には僕の持っていた夏のイメージは伝えて無かったんですよ。でも、さりげなくタイトルにそういったイメージを隠していて。たしか、夜空とか書いてあったと思います。そこは長い付き合いですから感じ取ってもらえたらなって。
春：逆に、そこまでイメージはしないで歌詞は書いていきましたね。俺のイメージとしては、「君ノ“心臓”ニ恋シテル」という映画があったとしたならば、カップリングはそのエンドロールなんですよね。だからと言って、表題の延長線で書くのも面白くないなと思ったので、“ある意味、恋。”っていうところでとどめておきたかったんです。出来上がってみたら良い感じになったので良かったです。ノリを求めるというよりは聴いてくれという曲になっているので、各々の伝えたい事が動きにしろ、音にしろ、出ればいいなって。だから、見ながら聴いてほしいですね、ライヴでは。
──「衝動的ダイアリィ」は、歌詞が短くて驚きました。
春：その２行を越えられるものが自分の中で無かったんですよ。なので、その２行に言いたい事が集約されています。
──２行しか歌詞が無いのに、まさかここまで曲が膨らむとは。
たつき：これこそ、ライヴで聴いてもらいたいですね。
──シングルなのに物足りなさはまるで感じず。それだけに、アルバムをしっかりと越える事が出来たのではないかなと思います。
さゅら：ありがとうございます。
──そして、この後にはライヴがまた控えております。
春：１０月２８日には高田馬場ＡＲＥＡで「ハロウィンごっこ Vol.2」と題したライヴをやるんですけど、去年１回目をやったので今年も楽しみですね。
たつき：今から何のコスプレをしようかなって。
──今でも充分にコスプレ感がありますけど（笑）。
たつき：そんな、アー写よりもパンチのあるコスチュームをやってやりますよ！
春：これは面白味のあるライヴにしたいなと思っているので、気軽に来てもらえたらなと。
──１１月４日からは、「林檎狩り～東名阪編」が開催されます。
春：５バンドでやるイベントライヴを恒例化させたいなと思っていて。とりあえず、去年は都内ですけど３ヶ月連続でやってみたので、今年は地方にまで足を伸ばしてみようと。これがうまく行けば、もっと規模を拡大出来るかなと考えているんですよね。
──対バン形式のイベントですから、ここはＳＣＡＰＥＧＯＡＴが勝ちに行かないといけませんね？
春：５バンドなので持ち時間も長く出来ると思うんですよ。それだけでも見せ方が変わるので、俺らを含め、全バンドをより深く理解してもらえる企画なんじゃないかなって。
──ちなみに、今年の出演者はどなたなのでしょう？
春：それが、メンツはまだ決まっていないんですよ。ただ、ヤバイ奴等とやりたいですね。
たつき：なので、ただ今、交渉中です。かっこいいバンドから刺激をもらえたらいいなと思います。
──そちらもお楽しみにという感じですね。
春：そうですね。まずは、シングルの発売を楽しみにしていて下さい。

Interview：ERI MIZUTANI