――BVCCI HAYNESとして初となるフルアルバム『FUNERAL』が10月10日にリリースされます。今はまだレコーディング中とのことですが、アルバム制作はいつ頃から始まったんですか?
KNZ:ソロとして活動し始めて、このアルバムのリリース日でちょうど2年が経つんですけど、始動した当時から自分の中での物語というか、コンセプトは見えていて。このアルバムに向けて、逆算して今までのシングルを作っていました。だから、曲によっては最近作ったものもありますけど、アルバム制作という意味では2年前から動き始めていて、あえてシークレットトラックとして収録した楽曲に戻っていくような流れになっています。

――超大作ですね!でも、初のアルバムにして1枚を通してのコンセプトが“死”(FUNERALは葬儀、葬列、死という意味)というのは、なかなか衝撃でした。この作品で初めてBVCCI HAYNESの音楽に触れた人は驚くでしょうね。
KNZ:それはあるかもしれないですね。ただ、ヴィジュアル系のシーンにおいて“死”という言葉はよく表現されるテーマですが、僕が描きたかったものはそういう直接的な意味ではなくて……。僕、友達とか身近な人が死んだとしても、悲しいって思えないんですよ。「マジか……」っていうようなショックはあるんですけど、良くも悪くも、喜怒哀楽の中で“哀”に当てはまる感情がきっと人より薄くて。じゃあ、自分はどういうふうにとらえるんだろう?って考えた時に、残された人の感情じゃなくて、死んだ人の目線で表現することなのかなって思ったんですよね。

――死んだ人の目線、ですか。
KNZ:そう。死んだ側って、そこまで悲しいって感情はないような気がするんですよね。もしかしたら感情自体が既にないのかもしれないですけど、こっちが思っていることとは違う想いがきっとある気がして。例えば、死んだ後もどこかで見ていて、残された人達のことを思う気持ちとか、輪廻の中で「ここにまた戻りたい」って思う気持ちって、“悲しみ”ではないじゃなくて“愛情”じゃないですか?そういう、恋とは違う“愛情”を“死”っていうワードと結びつけて伝えていけたらいいなって思って、制作していきました。と同時に、自分の過去を浄化するようなアルバムにしたいというのもあって、『FUNERAL』というタイトルになりましたね。

――KNZさんがイメージした通り、ちゃんと伝わりました。私がKNZさんにインタビューするのは今回が初ですけど、このアルバムを聴かせていただいて抱いた第一印象は、「KNZさんはすごく優しくて温かい人なんだろうなぁ」だったので(笑)。
KNZ:ははは、ありがとうございます(笑)。それはどういうところで感じました?

――私も初めは『FUNERAL』というタイトルに暗い印象を持っていたんですけど、1曲目の『ELEGY』のイントロから光が溢れる感じというか、“死”を包み込む温かさのようなものを感じたので、そういう人柄の方なのかなって。
KNZ:それは“FUNERAL”という言葉の捉え方や、アプローチの違いを感じ取ってもらえたってことなんでしょうね。逆にいえば、僕がそういう曲や歌詞しか書けないっていうのもあるんですけど(笑)。

――でも、それがKNZさんらしさでもあるのかなと。
KNZ:そうですね。ソロになる前はずっとドラマーだったし、バンドの時は、作曲することはあっても歌詞を書いているのはヴォーカルだったりしたので、自分らしさをあえて出さないようにしていたんですよ。もちろん、ライブでは自分らしさも出ますし、無理にキャラを作っていたわけじゃないんですけど、バンド内での役割もあるから、楽曲に対しては抑えておこうって。でも、今回はソロということで詞も歌も感情もいろいろ出せるので、ここは逆に1番自分らしい作品にしようって思って作りましたね。

――今作を制作する上で、特に自分らしさを表現できたと思うのはどういう部分ですか?
KNZ:昔の自分らしさっていうのは、多分ドラマーとしてのアプローチの仕方とかだったと思うんですけど、今は歌詞も楽曲も全部自分で作っていますし、歌も……自分ではお金をとるようなものではないと思いつつ、それでも自分で歌っていて。だからこそ、昔からファンの方には、ドラマーだった昔の僕と同じようで違うものを見せたいなと思っているし、逆に、初めてBVCCI HAYNESの音楽に触れた人が僕の過去を知りたいって思ってくれた時に、「もともとドラマーだったんだ!だから、こういうアプローチをするんだな」なんて思ってもらえたらいいなというのもあるので、そういう部分は意識して制作しています。中でも、1曲目の『ELEGY』の最後の方は、プログレッシブな展開になっていてドラマー然としているかなとか。2曲目の『類似する終の形状に限りなく近い』のドラムのフレーズなどは、昔から変則的なリズムが好きだったので、僕らしいのかなって思います。このアルバム通してですが、昔から僕を知ってる人が聴いたら、即「KNZっぽいなぁ(笑)」ってなると思います(笑)。

――ヴォーカリストとしては、この2年でどんな変化がありました?
KNZ:1番大きかったのは、2013年12月に1st Single『Hello hello』を出したんですけど、そのレコーディングの後に1回喉を手術したんですよ。もともとポリープ的な物があって。そしたら、半年くらい声が出せなくて、歌えなくなって……その頃から、声に対してや、歌うことへの向き合い方がちょっと変わったなって思いますね。でも、未だにヴォーカルとして足りない部分はたくさんあって、特に、今回のアルバムで挑戦して「まだまだだなー」って思ったのが、シークレットトラックに収録した曲ですね。この曲って、本当にピアノと歌しか入ってなくて、独唱だったので。。。

――誤魔化しがきかないパターンということですね(笑)。
KNZ:そう!「これ、入れるのやめようかな」って思うくらい(笑)。だけど、コンセプト的に、あえてこれを最後にシークレットトラックで持ってくるっていうのが僕の中で意味があって。アルバム自体、そこに向けて作っていたので、いろんな意味でこの曲が1番挑戦だったのかなって思いますね。

――レコーディングって、歌録りとドラム録り以外も、立ち会って自らディレクションするんですか?
KNZ:はい。もちろんベースもギターもピアノも、全部立ち会いましたね。すごく細かい人間なんで、演奏してくれた人が良かれと思ってやったアプローチがイメージと違うと、すぐに口を出しちゃうんですよね。でも、それもソロだからできることで、みんなが僕のことをちゃんとわかってくれてるからこそできることなので、今回はいろんな人に携わってもらった中でも、やりたいようにやらせてもらいましたね。その結果、自分が思っていたよりも良い作品になっていると思います。

――この曲達がライブでどう姿を変えるのか、今の段階でヴィジョンは見えていますか?
KNZ:今まで2年間で7、8本しかライブができていなくて、アルバムのリリース後も、10月22日の「AtoB」っていうツーマンライブしか決まっていないんですけど……(笑)。それこそ、『ELEGY』とかはライブでは再現できないと思うんですよね。でも、今作のリードである『BROTHER HOOD』はもともとライブを想定して作った曲なので、ライブで披露したら、CDとはまた違った色で伝わるのかなって思います。あと、自分自身が好きだっていうのもあるんですけど、大きい会場で映えるような楽曲が多いのかなって思いますね。

――ちなみに、リード曲である『BROTHER HOOD』の歌詞には、どんなメッセージを込めたんでしょう?
KNZ:『BROTHER HOOD』は曲がすごく明るい感じなんですが、詞は切ないテーマになっています。“愛情と死”を兼ねて表現しようと思った時に、どういうアプローチにしたら1番伝わりやすいかを考えたら、“戦争”というテーマが出てきて。戦場に行って亡くなった兵士の目線で、戦争自体が終わっても、自分は戻ってこられないんだけど、自分達が終わらせた戦争の後にある“平和”を願っている……みたいな。映画のようなイメージで、残してきた家族への愛情を描いてみました。

――戦後70年を迎えて、平和ボケしている中でも戦争についてみんなが考えている時期ですし、タイミング的にも伝わりやすいでしょうね。
KNZ:まぁ、そこはたまたまなんですが。今も考え方や各々が持つ正義の違いから世界で戦争が起きている中で、その事実を避けて通ってはいけないものだとは思っているので、この曲を聴いてくれた人にもなにか刺さってくれたらいいなっていうのは多少なりとも思います。
戦争っていうとやっぱり激しい感じに捉えがちだと思うんですけど、あったかい音に乗って伝えることによって、違う感情を感じてもらえたらいいなっていう想いが大きいですね。歌詞を、ライブを意識した楽曲と逆のアプローチにしたのは、そういう意図もありました。

――あと、個人的に気になったのが、9曲目の『The Bucket List』。“死ぬ前にやりたいことのリスト”をそう呼ぶそうですが、KNZさんが現状“やり残していること”は何ですか?
KNZ:些細なことでいえば色々あるんですけど、今1番大きいのは知識欲ですね。歴史や語学、自分以外の創造性とか。知らない事を学ぶのがこんなに楽しいのか!って最近になって気づきましたね。
よって、『The Bucket List』の歌詞は「一緒に頑張っていこうよ」みたいな感じでわかりやすい感じで書いています。主観的に書くことで、この曲を聴いた人が自分に置き換えやすくなったらいいなと。

――なるほど。改めて、1日1日を意味のあるものにしないといけないなって思わせてくれる曲ですよね。
KNZ:僕は死ぬときに“笑っていたい”っていうのが目標で、後々「もっとこれをやっとけばよかった」とか「無理に働くんじゃなかった」とか思いたくないんですよね(笑)。無理に詰め込むわけでもなく、自然の流れの中でいろいろと見出していけたら、もっと心が豊かになって良い人生になっていくのかなって思っています。

――KNZさんのお話を聞いた上で改めて『FUNERAL』を聴き直したら、どの曲も、また違った景色が見えてきそうです。でも、1枚を通して見た時には、第一印象で感じたように“救い”を感じられるアルバムなのかなって。
KNZ:そうですね。“FUNERAL”っていう単語に対しての=(イコール)は“愛”なんですけど、アルバム『FUNERAL』としては“救済”がテーマなので。それは、自分のことを歌詞や曲に織り交ぜて表現するっていう自己救済もあるし、過去の浄化もあるし、今回初めて手にとってくれた人にとっても何かの救いになればいいなと思うし……そう思ってもらえたら作った甲斐があります(笑)。

――では最後に、読者へのメッセージをお願いします。
KNZ:このアルバムを出すことで、いろんな反応があると思うんですけど、中にはすごくネガティブに捉えちゃって“こいついよいよ音楽辞めるんじゃないの?”って思う人もいると思うんですよね。(笑)でも、僕自身はそんなつもりは全くなくて、あくまでも1つの節目として考えているので、このアルバムを聴いて今後の展開に期待してほしいなと思います。

Interview:Midori Saito