Gt.楓 |
Ba.七星 |
Vo.マモ |
Dr.宏崇 |
Gt.Z |
——2015年はアルバム『少女喪失-syojosoushitsu-』のリリースが、バンドにとってとても大きな1つの節目となったR指定だけど、そのアルバムを引っさげてのツアー『青春の闇』で2015年と2016年を跨いだ形になったね。
「そうですね。『青春の闇』のファイナルが1月11日の豊洲PIT『知恵遅レ共ノ姫始メ』なので(※本インタビューは豊洲PIT前でした)。そこで2016年のツアースケジュールがすべて発表されることになっていて」
——そのツアーというが、『日本八十八箇所巡礼』というわけだね。そのツアーは3月12日の高田馬場AREAからのスタートだけど、1月2月は?
「1月2月は、制作活動とかですね。3月からずっとツアーに出て、ほぼ帰って来ないので、その前にいろいろと制作作業をまとめてやっておかないと。それと、3月9日にニューシングルのリリース予定があるので、それの作業が主ですね」
——ツアー的にはシングルを引っさげてって感じ?
「そうですね。でも、やっぱりシングルって曲数も少ないですし、アルバムツアーは一応1月11日のファイナルで締めくくられるので、3月からの『日本八十八箇所巡礼』は、フリーなセットリストで向き合えたらなと思ってますね。88箇所なんで、いろんな曲やっていけたらなって。たぶん、毎回変えていくんじゃないですかね。じゃないと自分たちも飽きちゃうんで(笑)」
——え!? 毎回!? それもすごいね。88箇所ってただでさえすごいことなのに。
「あんまりいないですよね、88箇所って」
——そうだね。聞かないね。この案はいつ頃から持ってたものだったの?
「自分の中では、一昨年くらいにはありましたね。でも、その時点では誰にも言ってなかったので」
——発案したときのメンバーの反応は?
「全員一致でやろうって」
——素晴しいね、R指定の団結力って。
「そうですね。でも、事務所の人には最初反対されましたよ。絶対に辞めた方がいいって。メンバーの体調面を気遣ってくれての言葉ではありましたけどね。でも、どうしてもやりたいっていう意思が硬かったので、納得してくれて」
——そりゃ心配だよね。宏崇は去年も病気してるし。
「そうなんですよね。そこはやっぱり最初から心配なところではあって。でも、本人もやりたいって言ってるんで、とにかく出来るところまで全員で頑張りたいなと思ってるんですよ。実際に、ここまでのロングツアーってバンド始まって以来のことなんで、すべてが未知なんですよ。47都道府県まわったときは、ぶっ通しじゃなかったし。そう考えると、ぶっ通しでやったのって、これまで最長で3週間くらいだったと思うんですよ。だから、今回、修行って銘打ってやるからには、細切れにやったんじゃ、普通のツアーと変わらないから意味ないんで、とにかくぶっ通しでやることに意味があったんです。そうするからには、メンバー全員それなりの負荷がかかるわけで」
——マモ自身、3日連続とか多いから、結構喉とかしんどいんじゃない?
「かなりキツイと思いますね。実際ヤバいと思うんですけどね。そこはなんとか乗り切りたいと思ってます」
——5ヵ月で88箇所でしょ? 相当しんどいよね。
「そうですね。ほぼ休みは無いですね、このスケジュールだと。時間をかけたら誰でもまわれると思うので。誰でもやれることではなく、自分たちに修行を課すという意味でも、ぶっ通しでやりたかったんです。そういう意味で、47都道府県ツアーも、敢えて今さらそこを銘打ってやることではないと思ったところでしたからね」
——なるほどね。マモらしい言葉だね。『日本八十八箇所巡礼』ってことは、お遍路さん?
「そうですそうです。お遍路さんです」
——どうして今、ここまでの修行を自分たちに課そうと思ったの?
「もともとは、1つのゴール地点を決めての、この88箇所巡礼だったんです。今、この『日本八十八箇所巡礼』のファイナルは、8月22日の幕張イベントホールなんですけど、実は、ここ、武道館の予定だったんです。自分たちがそこに立つべき時期だろうということで、武道館をここでやりたかったんで、そこに武道館を決めて、申請までしていたんですよ」
——うんうん。なのにどうして武道館じゃなくなっちゃったの?
「出来なかったんです」
——ん? キャパ的な問題ではないよね、確実に。
「はい。武道館側からNGが出てしまって」
——どういうこと!?
「バンド名からもうダメ、って感じでしたね。曲タイトルや歌詞も全部チェックされたみたいなんですけど、“リストカット”だとか“殺しました”とか、そういう不適切な言葉が多く含まれているってことで、許可出来ないっていう判断に至ったみたいで。シドさんのイベントライヴでは武道館に出させてもらったことがあるんですけど、それは単独公演ではなかったので、大丈夫だったみたいなんですよね」
——え、でも、“リストカット”だとか“殺しました”っていう言葉も、それらを促すために使われているわけではないし、歌詞の一歩奥を読み取ってくれたらいいのにね。そこで救われている子たちも居るってことを知ってくれたらいいのに。頭硬いよね。
「まぁそうですね。でも、仕方ないというか。もちろん悔しいですよ」
——そうだろうね。
「このツアーも、そこありきのツアーでしたからね、もともと」
——武道館という場所にも1つ大きな想いがあったんでしょ?
「ありましたね。88箇所の修行を終えて、その場所に迎えたらいいなって。でも、このツアーを組み終わった後に、“やっぱり武道館NGになった”って言われたんで」
——そっか。
「でも、せっかくやるって決めちゃったし、88箇所の修行は自分たちのために今、必要なことなんじゃないかなって思えたんです。いろいろなことも含めてね」
——なるほどね。マモ的には、武道館という場所に特別な想いはあったの?
「ありましたね。俺がバンドに憧れたのって中学生くらいの頃だったんですけど、その当時から武道館でいつかライヴがしたいっていうのが夢だったんで。やっぱ悔しいっすね」
——でも、残酷なようだけど、もう今後どうしようとも武道館にR指定が立つことは不可能ってことでしょ?
「そうですね。バンド名変えるしかないですからね。でも、それは違うと思うから。もう諦めるしかないですからね。まぁでも、それがすべてではないし、武道館に立つことがゴールでもないし」
——そうだよ。良くない? 逆にカッコイイと思う。武道館やれるバンドなのに、武道館で出来ないっていう。異端児さがR指定っぽくていいんじゃない? すごくらしいと思うけどね。
「そうですね。もうこうなったら、ネタにするしかないですよね(笑)。“武道館NGのバンドです!”って(笑)。そこを強みにして、とことんやってやろうかなって」
——そう。その悔しさはバネになるから。必ずね。そういうバネがある人間は強いから。
「そうですね。なんかずっと悔しさは残ると思うんで、そこをバネにしていくしかないですね。なので、今回は、ファイナルの幕張メッセを武道館に見立てて頑張ろうかなと思ってますね」
——でも、ある意味、キャパとしては幕張メッセは、武道館の先にある場所でもあるから、武道館すっ飛ばして幕張メッセって、ある意味すごいことでもあるけどね(笑)。
「まぁ、そうなんですよね(笑)。R指定としても今のところそこが最高キャパの会場になるので、気を引き締めて向かおうと思ってますね。自分たちが間違ったことを伝えているとも思っていないし、歌っているとも思わないんで」
——そうだよね。世の中を揶揄しているわけではない、むしろ現代社会に対する問題提起でもあると思うからね、R指定のメッセージは。
「そうですね。そう受け取ってもらえたらいいんですけど、なかなか。人に迷惑かけているわけではないのにってとこはありますよね。今はメディアもそうですし、時代もそうなってきちゃってるのかな? って思いますよね。なんか、面倒くさそうなところは、出来るだけ避けて通ろうとするというか」
——そうだよね。っていうかね、ちょっと余談になるけど、最近インタビューしてて聞いた話なんだけど、今って、学校の学芸会とかで『桃太郎』をやるとき、いっぱい桃太郎が居るんだって。
「え? どういうことですか? 桃太郎がいっぱい居るってどういうことですか?」
——順列をつけちゃいけないっていうので、主役を1人に絞ることもダメなんだって。だから、みんなで桃太郎やるんだって。びっくりするよね。
「え!? それ気持ち悪くないです(笑)?」
——そうなんだよ。それっていいのかな? って思ったっていうかね。昔はテストの順位も廊下に貼り出されたりもしたからね。もちろん、そんなの今は言語道断って感じみたいだし。
「俺たちの時代もありましたよ、テストの順位とか廊下に貼り出されてましたからね。そんなの毎回でしたよ。当たり前のようにありましたよ。それに、俺、学芸会で雑草の役とかやったことありましたよ(笑)、ホント」
——あははは(爆笑)! マモ、雑草!?
「そうですよ、雑草ですよ(笑)。ただの葉っぱ役でしたよ、俺(笑)。そんなのどうなるんすか、今の時代! 人権侵害ですよね、それこそ(笑)。ただの葉っぱですから」
——あははは。でも、そうだよね、よくよく考えたら私もキノコ役とかやったことあるもん(笑)。
「ですよね。そんなの今だったら大問題ですよね。その主役との格差たるもの、あり得ないでしょ。大変なことですよ(笑)。でもね、そうやっていろいろと規制したからって、日本が良くなってるとは思えないんですよ。っていうか、俺は、むしろダメになっていってる気がするというか。だんだん悪い方向に向かっていってる気さえしますからね。イジメも浮き彫りになってるし、自殺もどんどん増えていってるし。聞く耳を持たないでただただ規制したり、注意しなくなったり、することが、かえっていろんなことを増長させてしまっている気がするんですよね。自殺しちゃう子って、話を聞いてほしいんですもんね」
——そうだよね。そういう子たちにとって、R指定からのメッセージって、すごく心強いモノでもあると思うしね。
「そうあってほしいなって思いますね。完全に救えるなんておこがましいことは思っていないですけど、少しでも何かを感じてもらえたらとは思ってますね」
——ある意味、疎外された者、同士の言葉としてね。
「そうですね。そういう歌がこの先も届けていけるように、頑張っていけたらと思いますね。そのためにも、今回の88箇所の修行はなんとしてでも乗り切らないとって思いますね」
——そうだね。しかし、88箇所もよくライヴハウスがあったよね。
「そうですよね(笑)。その前に、知らない土地とかいっぱいありましたからね(笑)。まず、絶対にこういうことをしなければ、人生生きてるうちに行くことはなかっただろうなって思うのが、宮古島とか(笑)」
——そもそも、宮古島にライヴハウスがあるってことにびっくりしたよ。
「あるらしいですよ。宮古島ズビズパーっていうライヴハウスなんですけど、100人キャパくらいのちっちゃなハコらしいですけどね」
——マモ的に気になっている場所は?
「7月10日の石巻BLUE RESISTANCEとかですかね。このライヴハウスは、震災後、復興のために作られたライヴハウスらしいんですよね。もう震災から5年ですからね。早いですよね。離れているとやっぱりどうしても感覚が鈍くなりがちなんですけど、まだまだ完全に復興作業が終わったわけではないし、傷が癒えたわけではないし。そう思ったら、少しでも元気になってもらえたら嬉しいなっていう気持ちもありますしね」
——震災後、何度もライヴには行っていると思うけど、どう? 少しずつ元気になってきているなって感じたりする?
「そうですね。この前47都道府県まわったツアーのとき、震災のあった当日の3月11日に仙台でライヴをしたんですよ。地震が起こった時間にちょうど街なかに居たんで、そこで黙祷があって。そのとき、周りでいっぱい泣いている人たちがいたんですよね……。それを見たときは、本当にまだまだ傷は癒えてはいないんだなって実感したんです。だから、できるだけ、ツアーでもこっちに来れたらいいなって、そのとき思ったんですよね」
——優しいね、マモは。
「いや、俺たちに出来ることって、本当にそれくらいしかないですから」
——後は? 何処か興味のある場所ってある?
「さすがに88箇所となると知らないところいっぱいありますよね。6月3日に三国ヶ丘FUZZってとこに行くんですけど、三国ヶ丘って何処だろう??? って感じなんですよ。いまだに正確な場所を調べてないんで、何県かも解らないんですけどね(笑)。でも、スケジュールの前後が四日市と和歌山なんで、並び的にあの辺りなのかな〜って感じて、ぼんやり思ってるんですけどね(笑)」
——いいね、日本を知れて(笑)。ハコ的に京都の磔磔とかはすごく似合う気がするよ。
「京都の磔磔には5月8日に行きますね。事務所の社長からも、磔磔はすごくいいハコだし、似合うと思うって言われてたんで、行くのがすごく楽しみですね」
——京都でのライヴは初めてじゃないのに、磔磔は初めてでもあるんだね。
「そうなんですよ。何気にそういうとこ多いんですよね。やっぱ88箇所となると、普段行ってないハコも入れていかないと88個になんないんですよ(笑)。6月21日の熊本Diangoとかも、今回初めてツアーで行けるんですよ。俺、熊本出身なんですけど、いつも熊本は別のライヴハウスにお世話になっているので、そっちばっかりだったりするんですけど、今回はDiangoにも行けるので、個人的にすごく嬉しいんですよね」
——そこはマモにとっての思い出のライヴハウスだったりするの?
「はい。高校生の頃初めてライヴハウスっていう場所でライヴをした場所なんですよ。キャパ300くらいのちっちゃなハコなんですけど、日本一音がデカイハコって言われてるって聞いてましたね。客席に居ると、めちゃくちゃ耳が痛くなるんですよ。地元の高校生がよくライヴしてたハコでもあったし、地方のバンドさんもよく来てたんです」
——観にも行ってたの?
「行ってましたね。1番記憶に残ってるのは、La’Muleさんかな。La’Muleすごく好きで。バンドやる前から好きで、ずっとCD買ってたんですよ。前に、ご本人にも告白しました(笑)。後は、まだ上京する前によくライヴをしてた浦和Narcissとか懐かしいですね。5月28日にやりますけど、初めて行く場所も楽しみですけど、そういう懐かしい場所に行くのも楽しみですね」
——不安はない?
「まったく無いですね。本当に不思議と不安はまったく無いんですよ。何もビビってないんです。バンドをやっている上で、ライヴって1番楽しいって思える瞬間でもありますからね」
——素敵なことだね。メンバーとスタッフ、何人でまわるの?
「楽器まわり1人と照明とメイクとスタッフとメンバーだから、10人くらいですかね。機材車とメンバー車に別れて2台で。移動民族みたいな感じですね(笑)」
——PAさんは現地のハコの人でやるんだね。ってことは、照明はやっぱり絶対的にこだわりがあるってことでもある?
「そうですね。音ももちろんなんですけど、PAさんはそのハコの人の方がそのハコの音を知ってるってのもありますしね。照明はやっぱりすごく細かく注文するんで、知っててくれる人じゃないとキツイところもあって。でも、ハコのスタッフにお願いするとその都度その都度のリハーサルが大変だったりするんですよ。全部0からのリハーサルになるんで。そこがちょっとしんどいなって感じですけど、まあ、そこも修行なんで頑張ってきます」
——前向きだな、ホントに。感心する。心配なのは体調面だけだね。
「そうですね。とりあえず、3月出発したら5月までは確実に帰って来ないので、気合い入れて頑張ります(笑)。きっとこのツアーを無事終えることができたら強くなると思うんで。きっとこれやっちまえば怖いモノ無くなると思うんで、とりあえず頑張って乗り切ります! それが今のところの2016年の目標ですね。このツアーを終えて、その先のネクストステージに行けるように、まずは『日本八十八箇所巡礼』を無事5人で完走出来るように頑張ります!」
Writer 武市尚子