Gt.龍史

Vo.郁磨

Ba.TANO

──森羅万象ツアーも、残すはファイナルのみ(取材は8月上旬に行いました)。という事で、まずは、皆さんがイベント・ライヴにどのような想いで向かっているかを聞きたいです。
郁磨:みんな同じだと思うんですけど、完全に取りに行くスタンスではやっていますね。ただ、うちらは、ライヴ前に張り切って気合い入れをするバンドでは無いんですよ。
──ライヴが始まるまでは、楽屋で静かに待機しているという感じですか?
郁磨:各々のテンションに任せているところはあるんですけど、変に気張ってはいないですね。
──このツアーでは「AKANE」も披露したと思いますが、印象はいかがですが?
郁磨:ライヴの大事なところに置いてもちゃんと働いてくれるなこの曲は、という印象がありましたね。でも、このツアーはいつも一緒にやらないようなバンドさんとも廻る事が出来たので、色々なお客さんにREIGNを知ってもらえて良かったなと思います。
──良い経験となりましたね?
郁磨:やっぱり、意味のあるツアーにしたいと思っていたので、その点では目標は達成出来たかなと思いますね。
──ちなみに、郁磨さんから見て、このツアーを通してTANOさんが変化したところはありますか?
郁磨:1個、歳くいましたね。
──そういえば、ツアーとお誕生日が重なっていたんですよね。みんなで派手にお祝いはしたんですか?
TANO:いや、特には。
郁磨:ライヴ中にケーキは出したんですけど、その後で特別にお祝いはしてないですね(笑)。
──お誕生日を迎えて、何か新たに目標は立てましたか?
TANO:新たな目標は特に無いですね、ずっと一緒というか。
──ぶれないのが大切だという事ですね。TANOさん自身は、このツアーを振り返ってみていかがですか?
TANO:他のバンドと比べると、REIGNは割と浮いた存在だったと思うんですけど、こっちからすると、逆にそれが新鮮でしたね。
──なるほど。では、郁磨さんから見て、このツアーで龍史さんが変化したところはどこでしょう?
郁磨:1つ1つ、ちゃんと考えているんだなぁっていうのが分かりましたね。それにより、ツアーの後半では何か掴んでいるんだなという事が感じ取れたので良かったなと思います。そこは、本人が1番感じていると思うんですけどね。
──龍史さんは、このツアーを振り返ってみていかがです?
龍史:正直言うと、このツアーは最初の頃、自分の感情の浮き沈みが激しすぎて、体力が付いていかなかったんですよ。でも、後半になるにつれ、自分の中で吹っ切れたところもあって、一山乗り越えたというか。何か掴めるんじゃないかという手応えは感じましたね。
──それは、何か直接的なキッカケがあったんですか?
龍史:特にこれというキッカケは無かったんですけど、ライヴを重ねるにつれて見えてきたんですよね。
──先程、感情の浮き沈みが激しかったとおっしゃっていましたが、SPEED DISKに所属して初めて廻るツアーだっただけに、気持ち的にいっぱいいっぱいだったところもあるのかなと?
龍史:それはあります。基本、負けず嫌いなので、どこにも負けたくないという気持ちが強かったんだと思います。
──でも、それが原動力になっていたのかもしれませんよね?
龍史:うん、そうですね。さっきTANOも言っていたけど、REIGNって良い意味で色違いのバンドなんですよね。そういった中でどのように戦うのかっていうのを自分達で試行錯誤したおかげで、引き出しが増えたとは思います。
──コンポーザーとしては、苦悩してこそ良い曲が生まれるというのもありますからね?
龍史:そうですね。でも、苦悩するのはしばらくはいいです(笑)。
──それぞれに有意義なツアーになった事が分かりました。また、9月14日にリリースされる新作では、表題曲をバラードにするなど、挑戦する姿が伺えます。表題曲の「君に」を作曲されたのはTANOさんですが、これはどういったイメージで作っていったのでしょう?
TANO:これまで、REIGNの曲でバラードというのは何曲かあったんですけど、こういう曲もREIGNにあるんだよ、っていうのを知ってもらいたいというのはありましたね。あと、タイミング的にも、ここでバラードを出すのが良いだろうと判断して作りました。
──壮大な楽曲だけに、大きな会場で演奏するのも似合いそうですね?
TANO:特に大きい会場を意識して作っていったわけでは無いんですけど、情景が見えるバラードにしたいとは思ってましたね。また、星空や天の川を意識して作っていったので、最初はこの曲、仮タイトルが「織り姫と彦星」だったんですよ。
──そこを汲み取って、郁磨さんは歌詞を広げていったのですか?
郁磨:リリース時期が秋という事もあって、織り姫と彦星というのは一切考えていなかったんですけど、オケの雰囲気は星空のイメージがあったので、そこに乗せていったという感じですね。ただ、いわゆる幻想的な歌詞や、抽象的な表現というのはしたくなくて。そういった表現の仕方も好きなんですけど、この曲でそうするのはちょっと分かりにくいかなと思ったので、何が言いたいのかが伝わるように書いてはいきましたね。
──タイトルも非常に分かりやすいです。
郁磨:タイトルに関しては、TANOが後から付けたんですけど、この歌詞にはこれしか無いだろうという事で、「君に」となりました。
──「AKANE」を出した事により、この曲も違和感無く入っていけますね?
郁磨:うん、そうですね。
──龍史さんは、今回、表題にバラードが来るとは想像していましたか?
龍史:曲を作っている側としては、次はどんな曲を表題にしていこうって考えた時に、バラードでいこうという思考は俺には全く無くて。それで、曲の選曲をするうちに、ここでバラードを出す事によってこれからの方向性も違ってくると思ったんです。それで、この曲を選びました。
──レコーディングでは、何にこだわって演奏していきましたか?
龍史:レコーディングはツアーに出る前に終えていたんですけど、歌も大事にしつつ、あまりシンプルにしすぎないという事にはこだわりましたね。いわゆるゴーストノートじゃないけど、ぬるっといかないように音符を細かくしたりはしました。
──確かに、楽器陣は緩急の付いた演奏をしています。
龍史:出れるところは出ようと思って。ライヴを観てもそうだと思うんですけど、俺とTANOは、お互いのカラーを譲らないというか。だから、この曲も、良い意味でお互いが主張していると思いますね。
──そういったところでも、ポップスとしてのバラードではなく、ロックバンドが作るバラードの良さが出ていますよね。TANOさんは、ご自身の演奏に関してはいかがですか?
TANO:自分で作曲した曲だと、ギタリストとしてというよりかは、作曲者として全体を見てしまうので、ギターの事もそうですけど、全体のバランスを主に考えましたね。
──出来上がった今、バランスは完璧だなと思いますか?
TANO:そうですね。情景が見えるというのは大事にしたところでもあるし、3人編成というだけに、音色にはこだわりましたね。ここでは初めてアコギも使いましたし。
──1曲の中で色々と挑戦されましたね。それにしても、郁磨さんはここに来てバラードを表現するのがうまくなりましたね?
郁磨:聴かせる曲なので、単語の1つ1つがちゃんと耳に入ってくるようにしたいと思って、喝舌を良くして歌っていきましたね。でも、ロックバンドが表現するバラードでもあるので、ステージで演奏する際は、もっと感情的に表現しても良いのかなと。なので、音源とライヴ、どちらの良さも出れば良いなと思います。
──初披露は、リリース前に行われるワンマン・ライヴでになりそうですか?
郁磨:そうですね。セットリストに入れようと思ってます。
──MVも雰囲気重視でとても素敵に仕上がっていただけに、ライヴでもそのように表現される事を楽しみにしています。また、龍史さんが作曲された「Suge Nametal Sole」と「飼い主のいない嘘」も、表題曲とはまるで異なる楽曲だけに聴いていて面白かったですよ。
龍史:2つとも、インパクト勝負で書いていったんです。「Suge Nametal Sole」はライヴ向けの曲でもあるんですけど、最初は気楽な気持ちで書いていたんですよね。というのも、この曲はサビで〈COME ON COME ON COME ON〉って言っているんですけど、前に出した「Death bluT」がヒントになっていて。この曲をライヴでやると、間奏の部分で郁磨が必ず“COME ON COME ON”って言うんです。それが俺の印象に残っていたので、そこを活かしつつ、ベースもやりたい放題で書いていったんですよね。
──ライヴ向けと言える楽曲を、ライヴでのやり取りをヒントにして作ってしまう辺り、さすがです。
龍史:そんなに“COME ON COME ON”言いたいんだったら、俺がそういった曲を作ってあげるよって。
郁磨:まぁ、息継ぎすら無い曲になりましたけどね(笑)。
龍史:気楽な気持ちで作ったので、息継ぎとか考えて無かったんですよ(笑)。
──まさに、ヴォーカル泣かせの1曲となりました(笑)。もう片方の「飼い主のいない嘘」は、どういった発想で作っていったんですか?
龍史:今までは、郁磨の引き出しを伸ばしていこうと考えて作っていたんですけど、この曲に関しては、郁磨の長所を活かせる曲にしたいと思って書いていきましたね。結果的に、郁磨が伸び伸びと歌える曲になったと思います。
──TANOさんもそうですけど、龍史さんも全体のバランスを見て楽曲を作っていますよね?
龍史:曲を書く時って、バンドの雰囲気はもちろん、TANOの良さと郁磨の良さ、そして俺の良さがちゃんと見せられる事は考えていますね。
──だからこそ、まとまりの良い楽曲になったんですね。こちらのリリースも楽しみではありますが、その前に、先程も話に出しましたが、9月3日に高田馬場AREAでワンマン・ライヴが開催されます。意気込みとしてはいかがでしょう?
龍史:まだ、何もしてないですけどね。むしろ、ツアー・ファイナルが終わったら、少し休ませてくれっていう感じですよ(笑)。
郁磨:ぼちぼち下準備はしてますけど、リハはこれからなんですよね。
龍史:前も言いましたけど、一種の何とかランドみたいな雰囲気は作りたいなと思っているので、キャパが上がっても質は下げたくないなと。だから、ただのライヴというよりは、エンターテイメント性を強く出したライヴにしたくて。なので、ちゃんと見せられるライヴを作っていきたいなと思います。
──やはり、ワンマンだと世界観も作りやすいですよね?
龍史:そうなんですよ。ワンマンという場で、俺達はこういうバンドなんだよっていうのをきちんと提示したいですね。
TANO:今回、ボリューミーな内容になる事は間違い無いので、すごく楽しみではありますね。楽曲もそうですけど、ライヴもバランスが命だと思っているので、今回のワンマンも、全体的な流れを考えてやっていこうと思います。
──ワンマンだけあって、演奏する曲も多くなると思います。体力的には大丈夫そうですか?
郁磨:それが、ワンマンって意外と疲れないんですよ。REIGNを好きな人達が集まっているというのも大きいと思うんですけど、細かく煽動しなくてもノリを分かってもらえている分、曲の世界観を出しやすいんですよね。だから、時間が長くても体力的には疲れないんですよ。ただ、気を付ける事としては、曲数が多くなるだけに、セクション毎に散らからないようにはしたいなと。自分の表情がスムーズに変化していけるような流れを作れたらなと思います。その上で、ワンマンだと曲がこう変わるんだねっていうところを感じてもらえたら良いですね。
──メンバーそれぞれに、このワンマンが終わったら見えてくる事も多そうですね?
郁磨:そうですね。最近やっていない曲もここではやると思うので、後から、こういう風にも出来るんだねっていう感じにはしたいですね。そうする事で、ワンマン以降に行うライヴでも、やってこなかった曲が入ってくるだろうし。だから、この場で、最近やっていない曲を育てられたら良いなと思います。
──このワンマンが終わった後のスケジュールも聞いておきたいのですが、下半期の予定はいかがな感じですか?
郁磨:年内はライヴですね。またツアーも廻るし。でも、まずは、高田馬場AREAでのワンマンを成功させたいと思っています。
Interview:ERI MIZUTANI