Gt.九条 武政 |
Vo.黒崎 眞弥 |
Ba.一色 日和 |
Dr.遠海 准司 |
Gt.酒井 参輝 |
──新曲「私ハ傀儡、猿轡ノ人形」は、今年1月にNHKホールで行われた単独巡業『月下推敲』の千秋楽公演で初お披露目となったわけですが、ホラー要素が強いとはいえ、情熱的でもある曲ですよね。
参輝:楽曲のテーマとしては、“言いたいことも言えないこんな世の中じゃ”です。
──どこかで聞いたことのある台詞です(笑)。
参輝:これは各所で言ってるんですけど、これが本当にテーマだったんですよ(笑)。
──この曲を作った参輝さんとしては、それほどまでに言いたいことが言えない状態であったと?
参輝:というか、現代社会を生きる大抵の人が世間に唾を吐けないでしょっていう。まぁ、それに対して僕自身が怒っているわけではないんですけど、何だか窮屈だなぁって。あと、自分らを大きく評価するわけではないけれど、己龍として10年間活動してきた中で、メンバーそれぞれ、発言に対しての影響力や発信に対しての責任というのは割と付きまとってくるなというのを感じる昨今、ブログ1つ書くにしてもいちいち気を使っていかないといけないのは窮屈だなぁって。だからといって、好き勝手やっていいというわけではないのは分かっているんですけど、良い塩梅を取っていかないといけないと思うと、やっぱり窮屈さを感じるんですよね。その結果が、この曲につながったという。
──辛辣でありながらも率直な想いを曲に変換したと。
参輝:ダメと言われることに対して納得はしつつも、モヤモヤとすることもあって。そういう気持ちは出したいなと思いましたね。
──なるほど。しかし、よくここまで広がりましたね?
参輝:そこは歌唱の面が大きいんじゃないかと思います。
眞弥:結構サラッといけましたよ。そこまで、どうしようという感じはありませんでした。
──過去曲では、歌録りに苦戦していたこともあったような?
眞弥:そうですね。でも、この曲は方向性が見えていたというか。先に見えていれば、そのとおりに歌入れをしていくだけなので、その面での苦労はそこまでなかったです。あと、あらかじめ参輝から、こう歌ってほしいという具体的なイメージは聞いていたので、そのとおりに表現することが出来たかなと思います。
――特に気に入っている箇所はありますか?
眞弥:僕がこの曲で気に入っている部分は、Bメロですね。Bメロに入る前にシャウトが出てくるんですけど、そこが1番好きです。ここから変わりますよっていう、前兆みたいな感じが良いんですよね。
──注目して聴いてみます。では、九条さんは、この曲に対してどのような想いで録りに臨んでいきましたか?
武政:分かりやすい曲なんですよね、これ。シングルとしては異色の曲だとも思うんですけど、己龍としては得意パターンじゃないですか。だから、レコーディングに対してもやりやすかったですね。
──シングルとしては異色と言うのは納得です。もしかしたら、最新作は明るい曲でくるのではないかと予想したところもあったので。
武政:うんうん。でも、明るい曲で10周年を迎えられたら、俺は個人的に寒いなと思っていたので、今回の曲で良かったなと思います。
──九条さんが「寒い」と言い切ってしまうあたり、きっとこの曲はリスナーからの人気も高いだろうなと思いますよ。
武政:あはは(笑)。和製ホラーをバンドコンセプトにしているのに、ここで明るくてポップな曲を出してもね。でも、この曲でこだわったところは?って訊かれると結構困るんですよ。言ってしまえば、曲の一瞬、一瞬でフレーズを細かく考えているので、どの箇所がというのは見当たらないですね。けど、しいて言えば、ギター・ソロに入る展開が聴きどころかなとは思います。2人で弾いているし。
参輝:たしかに、聴きどころって改めて訊かれると難しいですね。このフレーズのここが好きっていうのはあると思うんですけど、自分でもこの曲は細かいなぁと思うので(笑)。だから、聴く人によって色々なところが刺さる曲だと思います。ギターやヴォーカルに限らず、それぞれのおいしさが出せるところは盛り込んだので。
日和:僕的には、この曲は己龍らしさがありながら、新しさも感じたんですよね。10周年を迎えるにあたって、これからの己龍らしさとも言える第1歩を踏み出せたんじゃないかなって思います。
──この10年で己龍が培ってきた“らしさ”というのは、具体的にどういったところにあると思います?
日和:和製ホラーを掲げて活動してきて、今年で10年が経ちますけど、大枠は変わっていないと思うんですよね。細かいところで言ったら趣向も変わってくると思いますし、演奏レベルも変わってくると思うんです。もちろん、そのときそのときで各人の流行りも絶対にあると思うので、前とまったく一緒というわけではないけれど、年数を重ねることによって、研ぎ澄ませていっている感じはありますね。
──そう聞くと、日和さんは本当に良いタイミングでヴィジュアル面を変化させていきましたね?
日和:さようでございますか(笑)。前は雰囲気に乗っかることが多かったんですけど、最近はすごく自分がこうありたい、こうやりたいっていう部分を大事にしたいなと思って、発信しているところはありますね。
──准司さんは、この曲が出来上がった今、どのような思いを持っていますか?
准司:己龍史上、最も音楽的な楽曲が出来たのかなと思いますね。だいぶ、エモーショナルだなと。やっぱり、基本的にドラムはメロディがないと言われている楽器なので、エモーショナルな部分というのは常に求めている部分でもあるんですよ。ただ、作曲面に関しては、参輝と武政に任せているので、僕はそこまでエモーショナルな楽曲がほしいとは事前には言わないんですよね。
──それなのに、ここまでエモーショナルな楽曲に仕上がったのはすごいですよ。
准司:10年目にしての完成系がこれかなという気はします。ゆったりとしたサビなんですけど、ドラムは速いんですよ。その分、ここではドラムフレーズを考えているというよりかは、メロをしっかり聴いて感情的に演奏しています。
──本当に、これからの可能性を感じられる曲ですね。
准司:そうですね。元々、僕はメタル畑だったので、感情の赴く曲というのは得意ではあるんですよ。でも、メンバーそれぞれに通ってきた道が違うからこそ、己龍としてうまくバランスが保てていると思うし、そこは今後もどう活かせるか、音楽面はもちろん、ヴィジュアル面でも楽しみなところはありますね。
──自由でいられるというのが己龍の良い面ですからね。今回、他に参輝さんが作ったのは「累」と「桜花爛漫」ですが、どちらもライヴで映えそうだなと思いました。
参輝:そうですね。別に家で聴かないでもいいですっていうぐらい、ライヴのことは意識しましたね。それだけ、自分の中には、これから始まる47都道府県単独巡業を視野に入れていたんですよ。なので、この2曲は武器になると思います。
──今までに、ありそうでなかったところを突いてきていますからね。
参輝:たしかに、「桜花爛漫」は今までになかった感じの曲ですよね。この曲、ライヴではタオルをブンブンと回してほしいんです。意外にそういった曲って己龍に少ないので、実現出来たら面白いかなと。きっと、セットリストのどの位置に持ってきても成り立つと思うんですよ。
──それだけに、どう見せてくれるのか楽しみでもあります。また、九条さんが作曲した「故人花トシテ」も、今後成長していく1曲となりそうですね?
武政:もちろん、ライヴもそうですけど、CDを1回だけじゃなくずっと聴いてもらいたくて。その中で新しい発見が出来るような曲というのを毎回作っているので、今回も、伝わるとか、そういったきっかけになるものが出来たら良いなと思っていて。だから、曲先行でも、歌詞先行でも、はたまた一緒でも好きなように楽しんでもらいたいなって思うんです。みんなが己龍に触れて新しい考え方が生まれてくれたら嬉しいなぁって。
──己龍の曲は、しっかりとしたコンセプトの下で成り立っているにせよ、これはこうじゃないといけないという押し付けがましさがないのが良いですよね。
武政:押し付けるとか、教えてあげるとか、僕らはそんな偉そうなことを言える立場ではないんですよ。ただ、バンドマンとしてみんなの前にいる以上は、何かのきっかけ作りになれたら良いなという思いはありますね。
日和:だからこそ、ライヴも何も考えるなって思います。ライヴだからといって、こういう風にしないと楽しめないということはないので。だから、47都道府県巡業も、来る人それぞれの想いで暴れていってほしいですね。
(Interview:ERI MIZUTANI)