──3月29日にミニ・アルバムがリリースされますね?
朔:今作のタイトルは『百舌』といいます。同じ名前をした鳥がいるんですけど、見た目の可愛らしさとは逆に、性格は攻撃的で狙った獲物を木の枝に突き刺すという習性を持っているんです。ということは、可愛らしいと思っているのは人間だけで、当の本人たちはそんなことは一切思っていないかもしれない。そこは、自分たちにも通じるところがあるかなと。
──ある意味、二面性ということでしょうか。
律:そうですね。やってやるぞという想いを胸の内に秘めながら行動しています。
──見た目だけにとらわれない音楽をやっているというのは、本作でかなり実感しました。1曲目から目まぐるしい展開を見せていますよね?
皐:「狭震症」は、“1曲目に相応しいものを”というのは意識して作ったところはありますね。曲調でいうとミドルの部類に入るんですけど、激しさを見せつつも、サビ前のブレイクでは抜けの部分を作っているので、ギターの音だけになっているんです。だからこそ、ライヴでどう持っていくかというのを考えながら作った楽曲ではありますね。
零:曲の構成的に、次はどの展開だっけと細かく思い出しながら録っていったので、大変といえば、大変でした。それだけ、小節ごとに微妙な変化がある曲なんですよね。
律:ドラムは、今までに使わなかったフレーズをイントロからやっているんです。
──それは新しいですね。ライヴでも1曲目に演奏したら面白くなりそうではないですか?
皐:それも全然ありですね。
零:どうなるかは、実際にライヴでやってみて決まると思います。
──「メアリー」は茜さんの曲ですね?
茜:サビのコードの動かし方というか、メロが乗っていなくても歌っているような流れというのをどうしても作りたくて。それで、このように表現してみました。
朔:以前に比べて、茜が作る曲ってバリエーションが豊かになったように感じるんですよね。それまでは“ザ・茜曲”という感じの、いかにもと言える曲が多かったんですけど、最近はデモの段階から色鮮やかな気がします。
茜:やっぱり、そこは前作「天上天下唯我独唱」が大きく関係していると思うんですよ。そこで自分というものを押し通したんですけど、今回はそれとは別に、自我を貫いていったというか。
朔:俺としては、この曲に対してアレンジしやすかったですね。歌を乗せやすく、届けやすくというところを意識してやっていったんですけど、歌詞は割とシンプルにまとめられたと思います。
──「赫い交差点」では一気に世界観が変わっていきますね。バンドが落ち着くと見せかけて、そうではないという。
零:逆に激しくなりました(笑)。
茜:これは「天上天下唯我独唱」と同時期ぐらいにできた曲なんです。雰囲気としては、5曲目に入っている「卍」につなげつつも、王道パターンの曲ではありますね。でも、王道ながらに、サビでは単音のギターフレーズが入ってくるなど、変わってきたところをしっかりと出したという感じです。既にライヴでも披露しているんですけど、さっき言ったサビのフレーズは皐が弾いています。
皐:俺がリードを選んだのはちゃんと理由があって。ライヴで出している音は茜の方が低いんですよね。なので、Hiを意識して音を作っている俺が今回リードを担っているという。
茜:バランスを取って、こうなりました。
──「BLACK SUGAR & CIGARETTE」は全体のバランスが良いですね。今までにないお洒落さが出ています。
皐:アメリカのギラギラ感じというのを作曲テーマに置いたので、ブライアンセッツァーやチャックベリーなど、そういった方々が好んで使っているような音を意識して選んでいきました。あと、キメの位置とかも16分音符をバンッと打つことによって一気に方向を切り替えられるというか。なので、あとはライヴでやってみてどうなるか。
零:この曲こそ、クールに決めていきたいですね。
律:途中に出てくるベースとドラムソロの部分では、クールに決められそうですね。あと、僕は、朔さんの動きがどうなるかも楽しみです。歌詞に《バッドボーイ》とか入っているので、元気良く見せてくれるんじゃないかなと思います。
朔:この曲はもう、何も難しいことは考えずに歌っていきたいですね。歌うというよりは、叫ぶと言った方が良いかな。
皐:とにかく、いつもどおりに楽しくやれればいいですね。きっと、ゴシップの幅が広げられる曲にはなると思います。
──「卍」は「赫い交差点」と同じように、ずっと頭の中に残る曲調になっていますね?
茜:今回、自分が作った3曲の中で1番新しい曲でもあるんです。サビは皐に付けてもらったんですけど、残りの部分はほぼデモどおりですね。自分としても自信作に仕上がりました。ただ、歌詞は予想外のところできました。だって、タイトルが卍とはいえ、ずっと卍卍と繰り返してますからね。やられたなぁと。「メアリー」で綺麗な歌詞を書いたと思いきや、結局は変わっていないという(笑)。
朔:俺の中でかっこいいを追求した結果が、これだから。
茜:ヴォーカルがそう言うなら、それで大丈夫です(笑)。あと、この曲は他の曲よりもチューニングが1個低いので、聴こえも違うと思うんですよ。だから、その点で他と比べても面白いし、何度聴いても飽きないんじゃないかなと。
皐:何気にブレイクが多い曲なので、そこが難しいなというのはありますね。だからこそ、自分にとっても勉強になる曲というか。
茜:何度かライヴでもやっているんですけど、これを極めることができたらバンドとしてすごくかっこよくなると思います。
皐:音を出すなら出す、切るなら切る、という風に縦のラインをしっかりと見せないといけない曲なので、そこを強化できたら、本当にかっこいい曲になると思いますね。
──ラストは、とても美しいバラード曲「木漏れ日」で締め括られます。
朔:俺の中では、この曲以外のラストは考えられなかったんですよ。
皐:「木漏れ日」の曲展開からしても、作品の最後を飾るっていう感じはすごくありますよね。だから、必然的に『百舌』のラストになったのかなって。
零:これはあくまで、ミニ・アルバムのラストだから良いんですよ。シングルで出したとしたら、ゴシップらしくはないなって俺は思いますね。
皐:たしかに。でも、作った際は、泣けるバラードを出そうっていうのはそこまで意識はしていなかったんですよ。単純に、自分が好きな曲調を出しただけで。ド頭からサビですし。
零:激しい部分がないっていうのも珍しいですよね。
茜:ライヴで演奏するときは、顔で見せる自信はありますよ。まぁ、律はどうだか分からないけど。
律:いや、僕だってちゃんとできますよ(笑)。この曲、すごく情景が浮かぶんですよ。樹海だったり深海だったり湖のほとりだったり。そうやって、場面ごとに世界観に入り込みながら演奏できると思うので、集中してやりたいですね。
朔:漂っている感覚というのを歌詞で表現したかったんです。だから、季節を通しての情景を描いていて。ぜひ、この世界観に溺れてほしいですね。
律:これこそ、ライヴではエンドSEに向いてますよね。
零:本編でやらないのかよ(笑)。まぁ、それはそれで、ありかもしれないけど。
朔:ゴシップならありえるな(笑)。
──既存曲と混ぜることによって、より彩りの良さを味わえそうな作品になりましたよね?
朔:そうですね。4月からツアーが始まるんですけど、イベント・ライヴも含めると、今年の半分は既に埋まっているんですよ。
──イベントでは他のバンドに負けない気持ちで演奏していると思います。その上で、単独ツアーはどういった目的を持って各地を廻っていきたいですか?
朔:いつもそうなんですけど、何をやらなきゃいけないかというのはツアーの1本目で分かるんですよね。なので、今回も初日に、俺たちは何をしないといけないのかが判断できると思います。その為にも、『百舌』の曲たちを自分の中に入れていくのは絶対ではありますね。なので、4月2日の横浜公演をぜひ期待していて下さい。
──そう聞くと、ツアー・ファイナルのWESTでは素晴らしい景色が観れそうな予感がします。
朔:各地で培ったものをファイナルに持っていくのは当たり前のことなので、それよりもWESTという場所をどれだけ特別なものにできるかというのに重点を置いていきたいと思います。それだけに、普通のツアーでは終わらせませんよ。
(Interview:ERI MIZUTANI)