──手鞠さんから見て、Soanプロジェクトに参加することの意義とは何でしょうか?
手鞠:そうですね、まず、手鞠っていう存在をどうするかというのが自分の中にあって。言ってしまえば、“ナカの人(本来の自分)”と“手鞠”というのは、一心同体でありながら別でもあるんです。ナカの人はどちらかというと、目立ちたがり屋ではないんです。だから、人前に出るのも怖いし、できることならずっと家にいたいって思ってしまうぐらいの人間なんですよね。でも、そういった人間が、表現したいものができて、このシーンでやっていく為には何が必要なんだろうと考えたとき、amber grisというバンドができたんですね。ただ、それが終わりを迎え、これからどうしようかなと思ったときにSoanさんから声をかけられて。というのも、僕のやってきたことをSoanさんはずっと見てきてくれたんですよね。Soanさんとは昔から知り合いでもあり、尊敬できる先輩だったので、そんな人が自分の作り上げてきたものに対して認めてくれていることがとても嬉しくて。そういった中、自分が生き残る場所をSoanさんは与えてくれたんですよね。手鞠と名乗っていい場所を作ってもらえたというか。だからこそ、今まで養ってきたものを普通に出すのではなく、ここから更に、この場所で1歩、また1歩と、技術面しかり、歌詞に関しても突き詰めていこうという姿勢になれたんです。それがすごく、自分にとって生きる実感になっていて。だからこそ、気負うことなく、純粋に音楽を楽しみながらやれているのはもちろん、自分にはまだまだ伸びしろがあったんだなと感じられるんですよね。しかも、Soanプロジェクトを始めた当初よりも発見があるのが面白くて。それだけに、やり甲斐があります。
──熱量を持ってこのプロジェクトに挑んでいることがわかりますよ。また、手鞠さんの才能を、同業者であるSoanさんが素直に良いと感じたのが、すごいなと思います。
Soan:Moranとamber grisは近いところにいたと思うんです。それこそ、Siznaと殊くんは一緒にバンドをやっていたこともあったし、更に遡ってみると、手鞠くんがRuvieをやっていたときには俺はFatimaで活動していて。そういったこともあって、手鞠くんの存在はすごく身近なところで感じていたんですよね。それに、手鞠くんの才能に触れれば触れるほど、魅力的なヴォーカリストだと思ったんです。だから、このプロジェクトを立ち上げるにあたり考えたのは、まずは手鞠くんのヴォーカルでいこうということでした。だから、1番に声をかけたのは手鞠くんなんですよ。
──そうだったんですね。でも、お2人が組むこと自体、相乗効果でしかないですよね。
Soan:そうですね、ウィンウィンですよ(笑)。
──活動してから1年が過ぎましたけど、当初はまさか、こんなにうまくいくとは思いもしなかったのではないですか?
手鞠:正直、これまでアコースティックで歌ったことがなかったので、それにちゃんと自分は応えられるだろうか、という技術的な面での心配はありました。でも、プロジェクトのお話をもらったときから、音楽に対する情熱や、ヴィジュアルシーンに向けて提示していきたい気持ちがSoanさんとは同じだったんです。あとは、音楽を楽しもうという根本的な想いも一緒だったので、これはお互いがすごく楽しめるプロジェクトになるなとは感じていたので、今日に至るまで、環境に引き出してもらったというところはありますね。先程のSoanさんの言葉を借りるなら、まさにウィンウィンの状態だなと思います。
──お2人だけでなく、強靭なサポートメンバーがプロジェクトを支えているのも大きいですよね?
手鞠:何よりも、Soanさんがメンバーをリスペクトし、大切にしているというのは大きいと思います。それぞれが重ねてきた経験値や、これまでやってきたバンドを愛しているからこそ、メンバーに迎えているという部分が強く出ているので、そこにも温かさを感じますし、音楽がしやすい環境ではありますね。
──Soanプロジェクトという冠が付いているにせよ、Soanさんのワンマンプロジェクトにならないところが面白さでもあると思うんです。それに、驚くほど、手鞠さんの色も濃く出ていますからね。
Soan:自分観点から見ると、ヴォーカルを考えて曲を作るのが俺のスタイルなんですよね。そこは昔から変わらないので、今回のように、Soanプロジェクト with 手鞠と謳っているからには、手鞠くんのことを中心に基本は考えています。もちろん、楽器のバランスや他の大切なメンバーのことも考えて制作していますが、基本というスタンスでは、手鞠と芥のことを中心に考えて2人のアプローチを模索しながら制作しています。だからこそ、ヴォーカルの色が濃く出るのは当たり前のことなのかなと。
──押し付けは一切なく、あくまで自然体でやられていますよね?
Soan:他者のことを考えられないようであれば、アーティストの前に、人としてダメだなって。これまでバンドを全力でやってきたからこそ、メンバーの大切さもわかるし、人とのつながりを大事にしたいんですよね。だからこそ、相手のことを、昨日よりも今日想っていたいというか。より良くなっていたい、1ミリでも大きく自分の器を大きくしていきたいと思っているので、それらがメンバーの想いと合致して、Soanプロジェクトを1年以上動かすことができたんじゃないかなと感じていますね。
──本当に好きなものを作っているのだな、というのが音を通して伝わってくるので、聴いていて気持ち良いです。
手鞠:仕事という感覚が一切ないというか。純粋に、アーティスト同士が同じ価値観の中で音楽を楽しめているという気がするので、不自然な構え方をする必要がないんですよ。
──Soanさんと手鞠さん、お互いに空気感が似ているのも音楽を楽しめている要因の1つなのかなと?
Soan:似ていますか?
──傍から見ている限りでは、そう感じます。それだけに、敢えて違う部分を挙げるとするなら、どんなところなのかなと?
Soan:難しいなぁ(笑)。どこだと思う?
手鞠:Soanさんの方が、僕よりも情熱的だと思います。しかも、それを隠したりしない。
Soan:露骨ってことか。
手鞠:露骨っていう言い方はちょっと(笑)。
Soan:でも、思ったことは割と、すぐに口に出すタイプではありますね。
手鞠:インテリジェンスなイメージを持ちながらも、すごく熱血漢な人なんですよ。普通、アニメとかならこういった性格って、2人の人間が持っているものじゃないですか。でも、その両方を持ち合わせているのがSoanさんなんですよね。アーティスティックなことをしながら、デスクワークもこなしてしまう。正反対のことをサラリとやってしまうのはすごいなって。そこは、ギターの祐弥さんとも話していたんですけどね。
──もしかしたら、Soanさんって2人いるのかもしれないですよ。
手鞠:あははは。まさかの(笑)。
Soan:ありがたいですよね、こういう風に言ってもらえて。器用といえば言葉は良いのかもしれないですけど、自分から見たらまだまだ足りないところはたくさんあるので、手鞠くんを始め、一緒にいるメンバーが俺のことを高く評価してくれるのは本当に嬉しい。でも、こう言ってくれる手鞠くんは、紳士だと思いますよ。
手鞠:そんな、とんでもないです。
──逆に、手鞠さんはSoanさんと違って不器用なイメージがありますよ。でも、その不器用さが歌詞にうまく反映されているし、1つのことに集中すると周りが見えなくなるぐらい没頭してしまうというところも魅力的だと思います。
Soan:あ、手鞠くんってそういうところあるよね。
手鞠:けど、周りからはそう見られたくなくて。一応、自分的には隠しているつもりなんですよ。
Soan:でも、バレちゃってるね(笑)。
手鞠:そこがもう、不器用なんでしょうね。隠しているつもりで隠れていないっていう(笑)。芥くんにも言われたんですよ。「ひねくれているように見えるけど、実はすごくストレートだね」って。それはすごく図星でしたね(笑)。
Soan:俺からすると、その言葉は芥にも言ってあげたい。君もそうだよって(笑)。
──それだけ純粋な心の持ち主ってことですね。
Soan:手鞠くんは確固たる芯がありますからね。
──そこが、2ndミニアルバム『旋律、静かな願いと』にもよく表れているなと。
手鞠:レコーディングを通して感じたのは、他のミュージシャンの皆さんはそれぞれに経験しているキャリアがすごいんですよね。1つのバンドで長く活動されているだけに、大人の付き合い方を熟知しているというか。良いところも悪いところも含めて、この人の魅力だというのを理解してくれるので、お互いにリスペクトしながら作品を作ることができました。Soanさんのリーダーシップとは別に、ムードメーカーの役割を担ってくれる祐弥さんもプロジェクトを支えてくれているし、Sachiさんのように音楽の感性に優れたバイオリニストや、ヴィジュアル系屈指の技術を持つギタリストのタイゾくん、そういう人たちの中で音楽が作れるというのは、自分にとっても勉強になりますよね。だからこそ、ライヴを観てもらいたいんですよ。セッションバンドではなく、プロジェクトとして活動している意味がわかると思うので。だから、今は本当に観てもらいたいという気持ちが強いんです。
Soan:本作の収録曲はすべてライヴで披露しているんですよ。ファンに対して、「こういう曲ができたんだけどどう?」って発信するじゃないですか。そうすると、真剣に向き合って聴いてくれるんですよね。それがステージから見ていてすごく幸せなんですよね。そして、ファンからもらったレスポンスが楽曲制作に活かせているので、とても良い流れが作れているなと。
──だからこそ、音源だけでなく、ライヴにも触れた方がより楽しめるというわけですね?
Soan:そうですね。とりあえず、秋までライヴはたくさんあるので。それこそ、聴いて寝てしまったというのも有りだと思うんですよ。心に入りすぎて寝てしまったというのなら、それは俺らの勝ちだと思いますよ。
(Interview:ERI MIZUTANI)