Ba.たかし |
Vo.慎一郎 |
Dr.がお |
Gt.杏太 |
昨年、結成15周年を記念し、2マンライブで復活。今年に入り、高田馬場AREA20周年イベントへ出演。11月19日に高田馬場AREAを舞台に復活ワンマン公演を行ったホタル。現状、ホタルとしての活動は停止している。だが彼らは、最新シングル『社会に散った日』を発売したばかり。来年2月には、高田馬場AREAのワンマン公演を完全収録したLIVE DVDもリリースになる。本当にもう復活はないのか。それとも…。気になるその辺の話と、最新シングルについて4人に話を聴いた。
――ホタルが解散をしたのは2004年のこと。2016年に結成15周年を記念し、一日復活。以降、一日復活という形で二度復活ライブを行いました。
慎一郎 ホタルは昨年6月に結成15周年を迎えたことから、12年ぶりにメンバーが集まり、2マンライブという形のもと1日のみの復活ライブを行いました。当初は、そこで終えるはずだったのですが、復活公演の話が高田馬場AREAの社長に耳に入り、「高田馬場AREAの生誕20周年公演を2017年6月にZepp Tokyoでやるんだけど、出ないか」と誘われ、二つ返事で「出ます」と言ったことから二度目の復活ライブを行うことが決定。ただ、メンバーみんなイベントでバンドの幕を閉じるよりも、最期にワンマンを行おうという意識を持っていたことから、11月19日に高田馬場AREAでワンマンライブを行うことを決め、その公演を持って、復活ライブの幕を閉じました。
――もう復活ライブは行わないんですか?
慎一郎 二度とやらないとは言いませんけど、やると宣言するわけでもなく、そこはフワッとした姿勢でいようかなとは思っています。
杏太 まさか、今になってホタルとして3回もライブをやるとは考えてもいなかったことなんでね。復活ライブのきっかけも、久しぶりに4人で呑む機会が生まれ、その時に「ホタルで1日だけライブをやっちゃう?」とノリで出た話から決まったことだったんで。
――慎一郎さんと杏太さんは、今も二人でアコースティックユニットとして活動をしていますが、たかしさんとがおさんは音楽活動はもうやっていないんですよね。
たかし 自分も、がお君も、今は会社員として毎日働いてます。仕事をしている方なら同じ気持ちだと思うけど、日々働いてると日常がマンネリ化してゆくんですよ。その中へここ2年ほどバンド活動が加わったことで、気持ち的にはいい刺激をもらい続けてました。
がお 僕もそうですね。最初に復活ライブを決めたときは、週に1日しかない休みをリハーサルに当てていたように、「貴重な休みを削ってまで、なんで俺はこんなことやってるんだろう」と思っていたんですけど。ライブを演り終えたときの充実感がたまんないくらい最高なんですよ。結果、ここまで続けられたというのはありましたね。
慎一郎 そんなこと言ってるけど、呑み屋で「ホタルを演ろう」と言い出したのもがお君だし、11月にやった3時間に渡るワンマンライブの記録用映像を今も休日のたびに見ているように、誰よりも復活ライブを楽しんでいたのが、彼ですからね。
――慎一郎さんと杏太さんは一緒にアコースティックユニットでの活動を行っているように、今でも仕事とミュージジャンを両立し続けていますが、お二人はもう…。
たかし 自分も、がお君も、またホタルとしてライブを行う機会が生まれたら演るかも知れないけど。過去に行った3本とも「これが最期だ」という気持ちを持って1本1本へ全力を注いできたように、毎回「後悔のないライブ」をやってきたつもりです。
――先の活動が決まってないにも関わらず、先日ホタルとして最新シングル『社会に散った日』を全国発売しましたよね。
慎一郎 これは僕の発案だったんですけど。「十数年経った今の自分たちの力や、今の4人が日々培った人生経験を新曲へぶつけたら、どんな歌が生まれるんだろう」「もし、ホタルが止まらずにズーッと継続していたら、今、どんな曲を歌っているだろう」というのを純粋に知りたかったんですよ。しかもホタル解散直前の時期に生まれ、唯一音源化していなかった『影になったレイラ』という楽曲があり、それを形にしたい気持ちも蘇ってきたことから音源制作を決めました。そうしたら杏太さんが「俺も1曲作る」と言ってくれたことで、結果、ホタルらしい『鬼灯』を入れた3曲入りのシングルを作りあげました。
――『社会に散った日』や『鬼灯』には、追いかけた夢に何度も破れ、現実社会の中へ飲み込まれた日々を送ってゆく人の人生観を投影しています。
慎一郎 杏太さんには「中年の叫び」って言われたけど(笑)。でも、今になったからこそ書けた歌なのは間違いないからね。
杏太 むしろ、そういう曲を作らないと、今の自分らが新曲を作る意味がないでしょ。
――『社会に散った日』も『鬼灯』も、夢を追い求めることを辞め、現実社会に身を浸している今だからこそ出てくる想いですよね。
慎一郎 まさに、そう。僕も普段は普通に働いてるし、4年ほど完全に音楽から離れた生活を送ってたし…。
――でも、また音楽の世界へ戻ってきた…。
慎一郎 いろんな縁が重なり、今、ここにいるわけですけど。個人的な気持ちとして言葉にするなら「音楽からは逃げらんないな」という想いがあったからなんでしょうね。今は音楽活動が中心の生活じゃないとはいえ、こうやって歌い続けていられることに幸せを感じています。
杏太 確かに二人は今も仕事と平行しながら音楽活動はしていますけど、「音楽で食っていく」とか「絶対にメジャーへ行くんだ」という意識を失くした時点で、夢を追いかけるのはあきらめたってことですからね。
たかし 『社会に散った日』の歌詞を読んだときには、今の自分の姿と重なり、自然と涙が出てきちゃいました。
がお 俺なんか、慎くんに「これ、俺のこと書いた?」と聴いたくらいだからね。
慎一郎 そうやって共感してもらえたのは嬉しかったこと。これって、本当に一度音楽の道から離れたからこそ感じれた気持ちだし、自分らと同じように、追いかけ続けた夢をあきらめた人たちにも響く歌になったなと思ってる。同時にこの歌が、夢を追うことをあきらめ、毎日の生活に覇気なく追われている人の気持ちを少しでも押せる歌になれてたらなとも思ってる。
――今の自分の想いを形に出来る環境を作れたのは、とても素敵なことなんでしょうね。
杏太 今のような姿は、3年前に4人で再会したときには微塵も思っていなかったこと。もちろん、今後もホタルとして一緒に活動していける保証が有るとは言い切れないと思ってる。4人とも今もそれぞれに抱えた人生を背負いながら日々を暮らしていれば、もしメンバーの誰かが親のことで実家に帰らなきゃいけなくなったら、もう二度とホタルとして復活することはない。そう考えたら、現状ホタルとしての活動を終えた今でも、4人で予定を合わせて集まれることが嬉しいんですよ。前に慎くんが「ホタルはバンドの実家みたいなもの」と言ってたんだけど。確かに自分ら4人にとって、音楽活動を通して帰ってこれる実家は間違いなくホタルだからね。
――しかも実家に戻り限定本数の中で活動を行った結果、新しい音源を発売すれば、11月19日のワンマン公演の模様を来年2月にLIVE DVDとしてリリースする動きまで生まれたからね。
慎一郎 がお君は今回のシングルを「自分の遺作」と言ってました(笑)。
杏太 だけど、遺作と言っても間違いではないくらい、4人とも本当に心の底から納得のいく作品が生まれたのは事実。俺自身、このシングルが完成したときに「これで死んでも悔いはない」と本気で思えてた。だからこそ今回のシングルが、自分らと同じように夢をあきらめ、日々の生活に流されている人たちの心の背中をほんのちょっとでいい後押し出来たら、それだけで俺らは嬉しいなと思ってる。
がお ワンマン公演のときにも、新曲として作った『社会に散った日』『鬼灯』の2曲を初披露したんですけど。初聞きにも関わらず、お客さんたちが拳振り上げるどころか、一緒に歌ってくれたんですよ。あんときほど「人ってこんなに温ったかったんだ」と感じたことはなかったし、今でもあの日のライブ映像を観ながら部屋で呑んでると、人の温かさを感じて涙が止まんなくなるんですよ。
慎一郎 お前、どんだけ愛情に触れてない生活をしてんだよ(笑)
たかし 『社会に散った日』や『鬼灯』は、今の自分の生きる希望にもなっている。だからこそ、この曲たちをいろんな人たちに聞いてもらい、その人の心の支えになれたら嬉しいし、そういうバンドがいたんだよというのを記憶として刻んでいて欲しいなと思ってる。
慎一郎 それと(戦争の悲劇を歌った)『影になったレイラ』を、今の世界情勢が不安定な時期に音源化出来たことも何かに導かれた結果というか、そこにも運命を感じるね。
杏太 今の時代だからこそ、より生々しさを持って響いてゆく歌だからね。
――こうやって新作を作った以上、またライブで披露したいという欲求はないんですか?
杏太 じつは今も、ホタルとしてライブのお誘いをいただく機会があるように、メンバーみんなの日々の生活に支障がないところで調整出来るのであれば可能性がないとは言えないよう、何時か嬉しいお知らせが出来たらいいなとは思っています。
慎一郎 ワンマン公演を行うまでは、みんな睡眠時間を削ったりと無理も重ね続けてきたからね。ただ、僕と杏太さんとでやっているアコースティックなユニットは、今後も継続していくつもりです。1月21日には赤坂SODAで二部構成のライブも決まっていれば、こちらでホタルの曲を歌うこともあるように、良ければ足を運んでください。
がお ホタルに関しては、一緒にやりたいというバンドさんらや、またライブを観たいというお客さんらの声がたくさん集まれば、週1回の休みをリハに当ててでもまたやりたいなという気持ちはあります。やっぱし、ライブ後にその日の映像を見ながら呑むお酒が一番の幸せなときなので(笑)。
たかし ライブは、自分たち自身の気持ちを解き放てる場だからね。今はまた機会があればとしか言えないけど、やりたい気持ちはありますよ。
杏太 その前にまずは、今回のシングル盤をどうにかしてたくさんの人たちに聞いて欲しいという気持ちが何よりも強い。
慎一郎 今後の活動に関しては無理せずにという気持ちだけど、来年は、このシングルをたくさんの人たちに聞いてもらえる環境を作りたいなと思ってる。まずは、twitterで動向をチェックし続けていてください。
TEXT:長澤智典